【ファスティング(断食)の真実:鍼灸師が考える、身体と心を整える新常識】


近年、「ファスティング(断食)」はダイエットや健康増進を目指す方の間で注目を集めています。しかし、多くの研究結果があるなかにはメリットだけでなくリスクも指摘されています。今回は、ファスティングに関する最新の研究や科学的エビデンスを整理し、私たちの身体にどのような変化が起きるのか、そして実践する際の注意点について解説していきます。


1. ファスティングの健康効果

1-1. 体重減少と代謝の改善

  • 16時間の間欠的ファスティングが体重減少に寄与したという報告があります。ある研究では、16時間ファスティング群が対照群と比べて約3.6%体重が減少したとされています。
  • また、ファスティングによってインスリン感受性が高まり、血糖値のコントロールが改善される可能性も報告されています。

1-2. オートファジーの促進

  • オートファジーとは、古くなった細胞や不要な物質を分解・再利用する仕組みのこと。ファスティングによってこのプロセスが促進されるため、細胞レベルでの健康維持や慢性疾患の予防に役立つ可能性があります。

1-3. 腸内環境の改善

  • ファスティングは、腸内の有益な細菌の多様性を増加させ、炎症抑制や長寿に関連するとの報告があります。さらに、腸の再生能力が高まることで、内側からの体質改善をサポートすることも期待されています。

1-4. 脳の健康

  • 一部の研究では、ファスティングによって認知機能が向上する可能性が示唆されています。特に、動物実験で記憶力が向上したとの報告があり、今後の研究が注目されています。

2. ファスティングに関わる最新研究とリスク

2-1. 腸管の幹細胞再生とがんリスク

  • MITの研究によると、ファスティングは腸管の幹細胞の再生を促進する一方で、再給餌後にがんリスクを高める可能性が示唆されています。マウスを対象とした研究結果であり、ヒトに対する影響を確定するにはさらなる研究が必要です。

2-2. 時間制限食と心血管リスク

  • 8時間の時間制限食を実施した場合、心血管疾患による死亡リスクが91%増加する可能性があると報告した研究があります。20,000人以上を対象とした大規模調査ではあるものの、一方で他の研究では心血管リスクを低下させる可能性を示唆する結果も存在するため、今後のさらなる検証が必要です。

2-3. 宗教的断食の影響

  • 宗教的断食を行うことで、心血管疾患に関連するリスクバイオマーカーの低下が観察されたとのレビューがあります。実践内容や期間、個人の健康状態によって結果は大きく異なるため、一概にメリット・デメリットを断言することはできません。

2-4. 長期断食と生理的変化

  • 21日間の完全断食に挑戦した研究では、体重や血糖値が有意に低下し、心機能に対しては大きな悪影響が見られなかったと報告されています。しかし、長期断食は電解質異常など重篤なリスクを伴う可能性があるため、専門家の指導なしで行うのは危険です。

2-5. 間欠的断食と健康関連の結果

  • 多くのランダム化対照試験で、間欠的断食が体重管理や血糖値コントロールに有益であることが示されています。一方で、24時間の断食が腸上皮のがんリスクを高める可能性があるとの研究もあり、実践方法には十分な注意が必要です。

3. ファスティングの生理的メカニズム

  • ファスティング中、身体はエネルギーを節約し、主に脂肪やグリコーゲンを効率的に利用します。これにより、酸化ストレスの軽減細胞保護の促進といった効果が期待されます。
  • 糖尿病や心疾患、神経変性疾患のリスクを抑える可能性がある一方で、動物実験の知見が必ずしもヒトに当てはまるとは限らないため、さらなる研究が求められています。

4. 鍼灸的視点から見たファスティング

鍼灸の世界では、身体のバランスや「気・血・水」の流れを整えることを重視しています。ファスティングによる腸内環境や細胞の再生力の向上は、東洋医学でいう「内臓を休ませる」という考え方に通じるものがあるといえるでしょう。ただし、以下の点には十分注意が必要です。

  1. 体質・体調の見極め
    • 虚弱体質、妊娠中・授乳中の方、栄養不足が懸念される方はファスティングを避けましょう。
    • 糖尿病などの既往症がある場合は、必ず医師に相談してください。
  2. 期間と方法の調整
    • 長期間のファスティングはリスクが高いため、間欠的ファスティング(例:16時間断食・8時間食事など)から始め、身体を慣らしていくのが望ましいです。
  3. 専門家のサポート
    • 長期断食や体調に不安がある方は、医師や管理栄養士、経験豊富なファスティング指導者のサポートを受けましょう。
    • 当院では、患者様の状態に合わせて鍼灸施術を組み合わせながら、安全に身体を整えるサポートを心がけています。

まとめ

ファスティングは正しく行うことで体重管理や代謝改善、オートファジーの促進など、さまざまなメリットが期待できます。しかし、研究によっては心血管リスクの増加がんリスクの上昇などのデメリットも示唆されており、すべての人に無条件で適しているわけではありません。

結論として、ファスティングを安全かつ効果的に行うためには、個々の体質・健康状態に合わせた適切な方法を選択することが非常に重要です。自己流で極端な方法を行うと、かえって身体に大きな負担をかける可能性があるため、必ず専門家や医療従事者と相談のうえで計画を立てましょう。

  • 医療専門家の意見を取り入れる
  • 適切な期間・方法で安全に行う
  • 鍼灸や運動、栄養指導を組み合わせることでより高い効果が期待できる

当院では、鍼灸を通じて身体の巡りを改善し、ファスティング中に起こりやすい不調を和らげたり、ファスティング後のリカバリーをスムーズにするサポートを心がけています。「ファスティングの効果をより引き出したい」「身体の根本から体質を整えたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。一人ひとりに合った健康プランをご提案いたします。