「このままではよくない」
「そろそろ本気で整えたい」
そう思っているのに、肩こり、頭痛、首こり、腰痛、食いしばり、睡眠の浅さ、疲労感、冷え、自律神経の乱れ、美容のお悩みなどを何年もそのままにしてしまう。
こうしたことは、決して珍しくありません。
そしてまず最初にお伝えしたいのは、それは意志が弱いからではないということです。
人の脳には、今の状態を維持しようとする働きがあります。
行動科学では、これを現状維持バイアスと説明する考え方があります。人は新しい選択肢があっても、変えることより「今のまま」を選びやすい傾向があります。これは、不調がある人にもそのまま当てはまります。
たとえば、
- 新しい治療院を探す
- 予約を取る
- 自分の症状を説明する
- 継続的に身体と向き合う
こうしたことはすべて、脳にとって「変化」です。
変化にはエネルギーが必要です。
しかも、未知のものには少なからず不安が伴います。
すると脳は、たとえ今の状態がつらくても、
「昨日まで何とか過ごせた状態」
を安全だとみなしやすくなります。
つまり、
つらいのに動けない
のではなく、
つらくても変化より現状維持を選びやすい
のです。
特に慢性的な不調は、骨折や高熱のように「明らかな異常」として現れないことが多くあります。
むしろ、
- 朝から重だるい
- 集中しにくい
- 顔がこわばる
- イライラしやすい
- 呼吸が浅い
- なんとなく元気が出ない
といった形で、じわじわ日常に入り込みます。
すると人は、
「年齢のせいかな」
「忙しいから仕方ない」
「寝れば何とかなる」
「みんなこんなものかもしれない」
と考えるようになります。
医療行動に関する研究でも、症状をどう意味づけるか、どれくらい深刻だと認識するかが、相談行動に大きく関係するとされています。強い異常だと認識できない場合、人は受診や相談を遅らせやすくなります。
つまり、長年の悩みを放置してしまう方の多くは、
「何も考えていない」のではなく、
脳が変化を避け、心が不調を日常化し、身体のサインに慣れてしまっている
状態とも言えます。
ここで大切なのは、我慢できることと、問題がないことは違う、ということです。
我慢できるからこそ放置されやすい。
でも、我慢が長いほど、身体の緊張や回復力の低下が当たり前になっていくことがあります。
特に、食いしばりや肩こり、頭痛、自律神経の乱れ、睡眠の質の低下などは、一つだけが原因ではなく、生活背景、ストレス、姿勢、循環、回復力の低下などが複雑に関わっていることも少なくありません。
こうした状態は、「もう少し様子を見よう」としている間に、少しずつ深く定着していくことがあります。
だからこそ、当院では
「ひどくなってから」ではなく、
まだ我慢できるけれど、このままは不安
という段階も大切にしています。
不調を抱えたまま長く頑張ってきた方ほど、まず必要なのは自分を責めることではありません。
「なぜこんなに長く放置してしまったのだろう」と責めるより、
人はそもそも放置しやすい仕組みを持っている
と知ることが、見直しの第一歩になります。
次回は、さらに人が動けなくなる理由、
「今さら行っても…」「変わらなかったら損をする」
という心理についてお話しします。

