近年、統合失調症やうつ病、双極性障害などの精神疾患に対して、鍼灸治療が有効である可能性が注目を集めています。これらの疾患は自律神経のバランスが大きく乱れることで、症状の増悪や慢性化につながることが多いとされています。そこで本記事では、鍼灸治療がどのように自律神経を調整し、精神疾患の症状緩和にアプローチできるのか、そのエビデンスとあわせてご紹介します。
1.精神疾患と自律神経の深い関係
- 統合失調症
幻覚や妄想、不安感といった症状が特徴ですが、自律神経機能が乱れることで緊張が持続したり、不安定な睡眠リズムが見られることがあります。 - うつ病
気分の落ち込みや意欲低下だけでなく、自律神経の乱れからくる頭痛、消化不良、睡眠障害などの身体症状が併発するケースも多いです。 - 双極性障害
「躁状態」と「抑うつ状態」が繰り返す疾患で、自律神経バランスの乱れが気分波動の振れ幅を大きくする一因とも言われています。
これらの精神疾患においては、自律神経のバランスを整えることが安定した日常生活を送る上で重要となります。
2.鍼灸が自律神経を調整する仕組み
鍼灸の施術では、身体にある特定のツボ(経穴)を刺激することにより、交感神経と副交感神経のバランスを整えるとされています。例えば、ストレスや緊張が高まり交感神経が優位になっている場合、鍼刺激によって副交感神経を活性化させ、リラックス状態へ導きやすくなります。
- ストレス反応の軽減
ツボを刺激することで、脳内物質のセロトニンやノルアドレナリンの分泌を調整し、心拍数や血圧を落ち着かせる働きが期待できます。 - リラクゼーション効果
鍼灸には筋肉の緊張を緩和する効果があるとされ、身体がほぐれることで交感神経の過剰な興奮を抑制しやすくなると考えられています。
3.各疾患と鍼灸のエビデンス
3-1.統合失調症
鍼灸治療によるリラクゼーション効果や脳内ホルモンバランスの調整作用が、不安や緊張を和らげる可能性が示唆されています。セロトニンの分泌が促され、症状緩和に寄与するとの研究報告があります。
3-2.うつ病
うつ病に対する鍼灸治療は、多くのランダム化比較試験やシステマティックレビューで効果が確認されています。セロトニンやノルアドレナリンの放出増加が期待され、薬物療法と併用することで相乗効果が得られるケースも報告されています。
- 参考論文
- 「うつ病と双極性障害うつ状態に対する標準治療による助走期間を考慮した鍼治療3ケ月の上乗せ(add-on)効果と持続効果」(2019年, 全日本鍼灸学会雑誌)
3-3.双極性障害
鍼灸が自律神経のバランスを整えることで、気分の大きな揺れを緩和する可能性があります。躁状態・抑うつ状態の双方に対してエネルギーの過不足を調整し、睡眠の質を向上させた例も報告されています。
- 参考論文
- 「双極性障害の慢性的なうつ症状に対し鍼治療が有効であった1症例」(2018年, 全日本鍼灸学会雑誌)
4.実際の臨床研究から見る効果
- 鍼治療と抗うつ薬の併用
薬物療法だけでは十分な効果を得られなかった方が、鍼治療を加えることで症状の改善度が高まったという報告があります。- 例:2017年発表の「うつ病に対する鍼治療のランダム化比較試験に関する文献レビュー」(『現代鍼灸学』)では、複数のRCT(ランダム化比較試験)を総括して、鍼治療の有用性が示唆されています。
- 睡眠障害の改善
統合失調症やうつ病、双極性障害の患者さんはしばしば睡眠障害を伴います。鍼治療で自律神経を整えると、夜間の入眠や睡眠の維持がスムーズになる例があり、生活リズムの安定につながります。
まとめ
統合失調症やうつ病、双極性障害といった精神疾患は、自律神経の乱れと深くかかわっています。鍼灸治療には自律神経のバランスを整える作用があるとされ、多くの研究や臨床報告で効果が示唆されています。特に、薬物療法だけで効果が十分でない場合にも、鍼灸を併用することで症状が軽減しやすくなるケースが報告されています。
「なかなか症状が改善しない」「心身が落ち着かず、疲れが溜まっている」という方は、ぜひ一度鍼灸治療を検討してみてください。当院では、患者様の状態に寄り添い、最新の知見を取り入れた鍼灸治療を行っております。お気軽にご相談ください。
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ぜひ一度、ご自身の体調やお悩みをご相談ください。お力になれるよう努めてまいります。

