日々の食いしばりや肩こり、腰痛。
これらの多くは「筋肉が過剰に緊張した状態=筋スパズム」によって起こります。
この“こわばり”を和らげるカギのひとつが、実は**マグネシウム(Mg)**というミネラルです。
筋肉をゆるめるミネラル「マグネシウム」とは?
マグネシウムは、体内に約25g存在し、その60%以上が筋肉や骨に含まれています。
このミネラルは「筋肉の収縮と弛緩のバランス」を保つうえで不可欠な働きを持っています。
筋肉は、カルシウム(Ca)が細胞内に流入すると収縮し、マグネシウムが拮抗的に作用して弛緩します。
つまり、マグネシウムが不足すると「緊張したまま戻れない筋肉」になりやすく、
これが慢性的な肩こり・腰痛・顎の食いしばりなどにつながるのです。
さらに、マグネシウムには神経興奮を抑える作用や、痛みに関わるNMDA受容体の過剰刺激を抑える作用も報告されています(National Library of Medicine, 2020)。
筋肉だけでなく、神経の興奮性を下げる点でも“リラックスミネラル”と呼ばれています。
温浴×マグネシウムの相乗効果
温かいお風呂につかるだけでも、血流が改善し、筋肉のこわばりが和らぎます。
そこにマグネシウムを加えると、次のような相乗効果が期待できます。
- 筋肉の収縮・弛緩バランスを整える
→ 筋細胞内のCa²⁺とMg²⁺のバランスが整い、過剰な緊張が緩和。 - 代謝・血流の促進
→ 温浴効果とミネラルによる血管拡張作用で、乳酸や老廃物を除去。 - 神経の興奮を鎮める
→ 副交感神経が優位になり、ストレスや食いしばり傾向が軽減。 - 睡眠の質が向上
→ マグネシウムはメラトニン・セロトニン合成にも関与しており、深い眠りをサポート。
このように「マグネシウム入り入浴剤」は、筋肉・神経・自律神経のすべてに働きかけ、
体の緊張を多面的にゆるめるサポートをしてくれるのです。
皮膚からの吸収はあるのか?
「入浴でマグネシウムは本当に吸収されるの?」という疑問もあります。
実際のところ、経皮吸収(皮膚からの浸透)に関する研究はまだ結論が出ていません。
一部の研究では、毛穴や汗腺を介してマグネシウムイオンが体内に取り込まれる可能性が示唆されていますが、
血中濃度の上昇はごくわずかで、「温浴による血流促進が主な効果である」との見解が主流です。
とはいえ、温浴による血流改善+マグネシウムによる筋弛緩作用の環境が整うことで、
入浴後の“軽さ”や“スッキリ感”を感じやすくなる方が多いのも事実です。
慧仁治療院が推奨する入浴法
当院では、筋肉や筋膜のこりが強い方に「マグネシウム入り入浴剤」をセルフケアとして推奨しています。
ただし、温度・時間を誤ると逆効果になることもあるため、以下の方法をおすすめしています。
- 温度:38〜40℃のぬるめ
→ 熱すぎると交感神経が刺激され、かえって緊張が高まります。 - 時間:10〜20分程度
→ 汗がじんわり出る程度が理想。長湯は脱水や疲労の原因になります。 - タイミング:就寝1〜2時間前
→ 体温が自然に下がるタイミングで深い睡眠に入りやすくなります。 - 頻度:週3〜4回
→ 継続することで、筋膜の柔軟性と代謝リズムが整いやすくなります。
入浴後は、首・肩・腰を軽くストレッチすることで、温浴効果をさらに高めることができます。
注意点と限界
マグネシウム入り入浴剤は、根本原因を治す治療ではなく、補助的ケアとして活用するものです。
姿勢の崩れ、筋力低下、噛みしめ癖などが続く場合は、
鍼灸・整体による根本的な筋膜調整や自律神経ケアが必要です。
また、腎機能に問題がある方や皮膚疾患をお持ちの方は使用を控え、
発汗しやすい方は水分をしっかり補給してください。
まとめ
マグネシウムは、筋肉をゆるめ、神経を落ち着かせ、体の回復を助ける重要なミネラルです。
「温浴+マグネシウム」という組み合わせは、
食いしばり・肩こり・腰痛など“緊張型の症状”を和らげるうえで理にかなったセルフケアといえます。
慧仁治療院では、施術による深層筋アプローチに加え、
ご自宅でできる“入浴リカバリー習慣”としてマグネシウム入浴を提案しています。
毎日のバスタイムが、ただのリラックスタイムではなく、
“体を整える時間”に変わる。
そんな習慣づくりが、明日の疲れにくい身体をつくる第一歩です。

