「腹痛や便通の乱れが慢性的に続いてつらい…」「ストレスを感じるとお腹の調子が悪くなる…」
このようなお悩みを抱える方の中には、**過敏性腸症候群(IBS)**が疑われるケースがあります。IBSは機能性消化管疾患のひとつで、下痢や便秘、腹部の膨満感や痛みなど、多様な症状を引き起こします。そしてこの症状には、自律神経の乱れやストレスが深く関わっていると考えられています。
本記事では、IBSと自律神経の関係、さらに鍼灸治療のエビデンスをわかりやすく解説します。つらいお腹の不調でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
1. 過敏性腸症候群(IBS)とは?
IBSとは、**腹痛や不快感、便通異常(下痢・便秘、あるいはその両方)**を主な症状とする機能性消化管疾患です。内視鏡検査などでは大きな異常が見つからないにもかかわらず、繰り返し症状が現れることが特徴です。
- ストレスとの関係
IBSの症状は、ストレスレベルが高まると悪化することが多く報告されています。これは精神的な負担が腸の神経やホルモンバランスに影響を及ぼすためと言われています。 - 生活の質への影響
お腹の不快感や便通の不規則さは、プライベートや仕事など日常生活のあらゆる面に支障をきたすため、早めの対処が求められます。
2. 自律神経とIBSの深い関係
人間の身体は、交感神経と副交感神経のふたつがバランスを取り合うことで、心臓の鼓動や血圧、消化管の動きなどを無意識にコントロールしています。これらを総称して自律神経系と呼びます。
- 自律神経が乱れると…
交感神経が優位になりすぎると腸の動きが過剰になり、下痢や腹痛を起こしやすくなることがあります。一方で、副交感神経がうまく働かないと腸の活動が低下し、便秘傾向になることも。IBSの方は、この自律神経のバランス調整がうまく機能していないことが多いとされています。 - 脳—腸相関
「脳と腸は密接にコミュニケーションしている」という考え方があり、ストレスや不安が脳を介して腸に影響を与えることが、近年の研究で明らかになっています。
3. 鍼灸治療に期待される効果とエビデンス
IBSと自律神経の関係がわかってきたことで、自律神経のバランスを整えるとされる鍼灸が注目されています。ここでは、いくつかの研究論文をもとにした鍼灸治療の主なメリットをご紹介します。
- 自律神経の調整
- 鍼灸によって特定の経穴を刺激すると、迷走神経が活性化し、交感神経と副交感神経のバランスが整う可能性が報告されています。
- 結果として、腹痛や便通の改善だけでなく、不安感やストレス軽減も期待できます。
- 症状の緩和
- 鍼灸を受けたIBS患者は、対照群と比べて「腹痛・腹部膨満感・便通異常」が有意に改善し、日常生活の質(QOL)が向上したとする研究結果があります。
- また、12週間以上症状の改善が持続したという報告もあり、長期的な効果も期待されています。
- 炎症やストレスホルモンへの作用
- 鍼灸には炎症性サイトカインを抑制する働きが報告されており、腸内の軽度な炎症を和らげる可能性が示唆されています。
- リラクゼーション効果によりストレスホルモン(コルチゾール)が低減し、症状悪化の要因となるストレスを和らげる効果も期待できます。
- 既存の治療との併用が可能
- 薬物療法や食事療法と組み合わせることで、より包括的なケアが可能になります。特に下痢傾向・便秘傾向どちらの症状にもアプローチができる点が魅力です。
4. 主な研究の一例
- Acupuncture for the Treatment of Diarrhea-Predominant IBS (2022)
鍼灸が下痢を主訴とするIBSの症状改善に有望である一方、評価方法の課題も指摘。 - Effect of Acupuncture in Patients With Irritable Bowel Syndrome (2020)
一部の薬物(PEG 4000やピナベリウム臭化物)よりも長期的効果が認められたとの報告。
これらの研究は、鍼灸の効果を示唆する一方で、方法論や研究デザインの統一性に課題があると指摘しています。今後、さらに大規模なランダム化比較試験の実施が期待される分野です。
5. IBSを鍼灸でケアする際のポイント
- 継続的な施術
鍼灸は1回の施術で劇的な改善を狙うというより、複数回の施術を通じて徐々に身体の調子を整えていくものです。週1回〜2回のペースで数ヶ月続けることで、症状や体質の変化をより実感しやすくなります。 - ライフスタイルの見直し
ストレスや食生活の乱れがIBSを悪化させる可能性があります。鍼灸と並行して、睡眠や食事、適度な運動などを見直すことも重要です。 - 専門家への相談
IBSの症状は人によってさまざま。下痢型、便秘型、混合型などタイプが異なるため、個別の症状に合わせた施術プランを立てる必要があります。
信頼できる鍼灸院や医療機関で、しっかりとカウンセリングを受けましょう。
6. まとめ:IBSでお悩みの方は鍼灸で新たなアプローチを
過敏性腸症候群(IBS)は、自律神経の乱れやストレスが深く関わる複雑な疾患です。鍼灸は、自律神経を調整し、痛みや不安感の緩和に寄与する可能性が多数の研究で示唆されています。薬物療法や食事療法と組み合わせることで、より高い相乗効果が期待できるのも大きなメリットです。
もし、慢性的なお腹の不調やストレスを感じている方は、鍼灸治療でのアプローチを検討してみてはいかがでしょうか? 専門家のサポートを受けながら根本原因にアプローチすることで、今まで悩んでいた症状の改善への大きな一歩となるかもしれません。
▽ 過敏性腸症候群(IBS)の不調を根本からケアしたい方へ
当院では、丁寧なカウンセリングを行い、一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせたオーダーメイドの鍼灸施術をご提案しています。
「なかなか良くならない」「薬に頼りすぎずに治療したい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたの腸とココロを健やかに保つお手伝いをいたします。ぜひ一度、鍼灸による新しいケア方法を体感してみてください。

