施術が終わって、体を起こします。
「あ、軽くなったかも」
そう思って帰ります。そして三日後。あれ、どうだっただろう。
軽くなったはずなのに、いまがどのくらいなのか分かりません。受ける前と比べて良いのか悪いのか、思い出せない。一週間経つと、もっと曖昧になります。
これは、記憶力の問題ではありません
体の感覚は、比較が苦手にできています。
私たちが比べられるのは、せいぜい「さっき」までです。一か月前の肩の重さを正確に思い出せる方は、ほとんどいません。痛みや重さには、記録が残らないからです。
そして、もうひとつあります。
体は、続いている状態を「標準」として覚えていきます。
つらい状態が続けば、それが普通になる。少し良くなっても、その状態にすぐ慣れる。慣れたものは、意識に上りません。
だから、こういうことが起きます。
実際には変わっているのに、本人は「変わっていない」と感じる。実際には戻っているのに、「まだ大丈夫」と感じる。
同業の先生に、「数学脳ですね」と言われました
先日、同じ業界の先生と体の見方の話をしていて、こう言われました。
「先生、それ数学脳ですね」
正直、最初は何のことか分かりませんでした。自分では、当たり前のことをしているつもりだったからです。
伺うと、数字にして比べる、変わらなければやり方を変える、思い込みではなく結果で判断する——そういうことでした。言われてみれば、そのとおりです。ただ、理由があります。
自分の感覚を、信用しすぎないためです
施術者は、毎日たくさんの体に触れます。経験が増えると、触った瞬間に「これは前に見たパターンだ」と感じることがあります。
経験が役立つ場面はあります。ただ、似ているからといって、同じとは限りません。
そして「分かった」と思った瞬間に、確認が止まります。自分の考えに合う情報だけを集めてしまう。これは誰にでも起きる働きです。
だから、自分の感覚の外に、確認できるものを置いています。
- 数字で残す。記憶に頼らない。
- 変化を追う。その場の印象で判断しない。
- 合わなければ、考え直す。前回と同じ方法を今回も使うとは限らない。
- 必要なら、医療機関での検査や診察を優先するようお伝えする。
施術の途中で「今どうですか」と確認するのも同じ理由です。やってみた結果をその場で確かめないと、正しかったかどうか分からないからです。
なぜここまでするのか。自分の経験にもあります
私は以前、腰痛で約1か月半、ほとんど動けなくなったことがあります。復帰後も、思うように体が動くまでには時間がかかりました。
体がつらいと、仕事の予定も、普段できていたことも、思いどおりにいかなくなります。そのとき感じたのは、痛みそのものと同じくらい、「これがいつまで続くのか分からない」ことがつらいということでした。
訪問施術で、ご本人とご家族の暮らしに触れてきた経験も重なっています。
だから、いま何を確認していて、次に何を見るのかを共有したいのです。説明だけでつらさがなくなるわけではありません。それでも、分からないまま任せる不安は、減らせるかもしれません。
うまく説明できなくても、大丈夫です
「数学脳」と聞くと、難しいことを聞かれそう、きちんと答えなければいけなさそう、と感じる方がいるかもしれません。そんなことはありません。
ご相談のときに、お話をまとめてくる必要はありません。
「何となく、いつもと違う」「どこがつらいのか、うまく言えない」「気になることがいくつもある」
そんな言葉からで大丈夫です。時系列が前後しても、途中で思い出したことがあっても構いません。整理するのは、こちらも一緒に行います。
生活習慣について伺う際も、できていないことを採点したいわけではありません。お仕事やご家庭の事情も含めて、今できることを考えるために伺います。
そして、「変わりませんでした」も遠慮なくお伝えください。むしろ、その情報のほうが役に立ちます。それが分かれば、やり方を変えられるからです。
当院の方針「統合根本改善」について
当院では、体の状態と生活背景をあわせて確認し、必要な施術や日常の工夫を考える方針を「統合根本改善」と呼んでいます。
鍼灸、整体、美容鍼。それぞれの方法を、今の状態やご希望に合わせて検討します。(※この名称は、治癒や再発しないことをお約束するものではありません)
そして、確認する範囲が広くても、ご提案まで多くする必要はないと考えています。いくつもの課題を一度に渡されたら、それ自体が負担になります。
今、何を優先するか。続けられそうなのはどれか。そこまで含めて、一緒に整理します。
数字は、目的ではありません
最後に、はっきりお伝えしておきます。
数字が下がることが、ゴールではありません。数字が2になっても、やりたいことができていなければ意味がありません。
- 仕事のあとに、自分の時間を楽しみたい。
- 朝、あごの重さを気にせず支度をしたい。
- 休日に家族と出かける余裕がほしい。
不調の先には、その方が取り戻したい日常があります。
数字は、そこへ向かっているかどうかを確認するための目印です。ですから、数字が下がっていても「でも、まだ出かける気になれない」とおっしゃるなら、私は数字のほうを疑います。
ご相談について
当院は施術者1名で運営しているため、新規の方は月に数名までです。そのぶん、伺う時間も、確認する時間も、短くしなくて済んでいます。
ご相談は公式LINEから承っております。今の状態を伺ったうえで、当院でお役に立てるかどうかを先にお伝えします。
「前より良くなったのか、自分でも分からない」という方へ。
それは、あなたの感覚が鈍いからではありません。比べるものが、なかっただけです。
当院について
慧仁治療院は、東京都足立区入谷にある鍼灸・整体院です。
施術歴20年、延べ10万1千人以上のご相談実績をもとに、認定美容鍼灸師上級マスター・YNSA正規許可施術者・ONP分子栄養学認定資格を保有する男性施術者が、お一人おひとりに丁寧にご対応させていただいております。
足立区入谷・西新井・大師前・北千住・竹ノ塚・舎人・舎人公園・江北・日暮里・草加エリアの30代・40代・50代の女性を中心に、美容鍼・小顔ケア・肩こり・頭痛・食いしばり・自律神経のお悩み・睡眠のご相談を承っております。

