湯船につかる日は、週に何日ありますか?|入浴で分かっていること、分かっていないこと

数えてみてください。
この一週間で、湯船にお湯をためて、実際につかった日は何日ありましたか。

夏のあいだは、
「暑いからシャワーだけ」
「汗さえ流せれば十分」
「お湯をためるのが面倒」
そんな日が続いていた方も多いと思います。

そして、夏の終わりから少しずつ気温が下がってくる頃。
朝、ベッドから起きようとした瞬間に腰が痛む。長く座ったあと、立ち上がると腰が伸びない。なんとなく身体が抜けきらず、疲れを翌朝まで持ち越す。

すると、「夏にシャワーだけだったから身体が冷えて、腰を痛めたのでは?」と考えたくなるかもしれません。
ですが、ここは少し慎重に考える必要があります。

先に、正直に書いておきます

「シャワーだけの生活を続けると、ぎっくり腰になる」
このような直接的な因果関係を示した研究は、現時点では確認されていません。

入浴についてはさまざまな健康研究がありますが、シャワー中心の生活が急性腰痛を引き起こすとまでは言えません。では、湯船につかる意味はないのでしょうか。そういうことでもありません。

大切なのは、分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて考えること。現在分かっている範囲を整理してみます。

入浴と睡眠について分かっていること

比較的研究が蓄積されているのが、睡眠との関係です。
2019年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析(17研究を採用し13研究のデータを使用)では、次のような結果が報告されています。

「40〜42.5℃程度の温かいシャワーまたは入浴を、就寝1〜2時間前に10分以上行うこと」は、寝つきの改善や睡眠効率、主観的な睡眠の質の改善と関連していました。条件によっては、眠りにつくまでの時間が約10分短縮したことも報告されています。

ここで大切なのは、「お風呂に入れば眠くなる」だけではないという点です。

温かいお湯によって手足など末梢への血流が増えると、その後、身体から熱を逃がしやすくなります。人の身体は、眠りに向かう過程で深部体温が低下していきます。そのため、一度身体を温め、その後に熱を逃がしていく流れが、寝つきやすさに関係していると考えられています。「寝る直前」ではなく、就寝の1〜2時間ほど前が研究でよく使われているのはこのためです。

※なお、この研究には温かいシャワーも含まれています。したがって、「睡眠のためには必ず湯船でなければならない」とも言えません。ここも正確にお伝えしておきたいところです。

毎日湯船につかる人を追跡した日本の研究

日本では、JAGES(日本老年学的評価研究)のデータを用いた大規模研究があります。
日常生活が自立していた65歳以上の13,786人を約3年間追跡し、浴槽につかる頻度と、その後の要介護認定との関連を調べました。

週0〜2回の群と比較すると、週7回以上浴槽につかっていた群では、要介護認定に至るハザードが、夏で約28%、冬で約29%低いという結果でした。非常に興味深い結果です。

ただし、これは観察研究です。毎日入浴したから健康になったのか、もともと健康状態や生活習慣が良い人ほど毎日入浴できていたのか。この研究だけではそこまで区別できません。

つまり、「毎日湯船につかれば、要介護を29%予防できます」とは言えません。正確には、「高い入浴頻度と、要介護認定が少ないことに関連が認められた」という研究です。

では、湯船ならではの特徴(物理的作用)は?

温かいシャワーにも温熱作用があります。一方で、浴槽につかると身体には別の物理的作用も加わります。代表的なのが、「温熱・浮力・静水圧」です。

物理的作用身体への影響
温熱身体が温まることで末梢血管が広がり、血流が変化します。筋肉のこわばりや痛みに対して利用されることもあり、急性・亜急性腰痛についても、表在性温熱を非薬物療法の選択肢として挙げる診療ガイドラインがあります。
浮力水中では身体に浮力が働きます。一日中デスクワークをしている方にとって、立つ・座る・姿勢を保つための荷重から解放され、身体を支え続けなくてよい時間をつくること自体が休息になります。
静水圧浴槽では身体に水圧がかかります。特に下半身では、静脈還流など循環動態にも影響します。(※血流が良くなるから誰にでも良いという単純な話ではなく、心臓や血圧への影響もあるため、高血圧や心疾患などがある方は入浴方法に注意が必要です)

では、入浴と腰痛はどう考える?

ここが今回、一番お伝えしたい部分です。
入浴がぎっくり腰を直接予防する、とまでは言えません。腰痛には、長時間同じ姿勢が続くこと、急な負荷、睡眠不足、運動量、心理的ストレス、過去の腰痛歴など、さまざまな要素が関係します。
ですから、「湯船につかっていなかったから腰を痛めた」と一つの原因に決めてしまうのは適切ではありません。

一方で、身体を温める時間、仕事から休息へ切り替える時間、睡眠に向けて身体を整える時間、として入浴を利用することには合理性があります。

当院でも夏の終わりから秋口に、「朝、急に腰が伸びなくなった」「いつもと同じ動作なのに腰を痛めた」というご相談が重なることがあります。(※これは当院での臨床上の実感であり、統計的に断定できるものではありません)

安全な入浴の目安

「身体に良いなら熱いお風呂に長く入ろう」これはおすすめしません。
消費者庁では、高齢者の入浴事故予防として「湯温41℃以下、浴槽につかる時間は10分まで」を目安としています。

また、以下のような点も推奨されています。

  • 入浴前に脱衣所と浴室を暖める
  • 浴槽から急に立ち上がらない
  • 食後すぐの入浴を避ける
  • 飲酒後の入浴を避ける
  • 睡眠薬など服薬後の入浴に注意する

睡眠を目的とするのであれば、まずは40℃前後で無理のない時間からで十分です。熱いほど、長いほど良いわけではありません。

腰が急に痛くなったときは?

ここも重要です。
以前は、「ぎっくり腰になったら最初の2〜3日は絶対に温めない」と説明されることもありました。しかし現在は、発症からの日数だけで温熱を一律に禁止する考え方ではありません。急性腰痛に対する表在性温熱には一定のエビデンスがあり、ガイドラインでも選択肢になっています。

ただし、「お風呂で温めれば大丈夫」と自己判断するのも危険です。強い痛みや別の症状を伴う場合は、まず医療機関での評価が必要です。

※このような腰痛は、まず医療機関へ

腰痛とともに、以下のような症状がある場合は、先に医療機関へご相談ください。

  • 脚に急に力が入りにくくなった
  • 広い範囲に強いしびれや感覚障害がある
  • 排尿や排便がおかしい
  • 発熱や強い全身症状を伴う
  • 大きな転倒や事故のあとに痛みが始まった
  • がんの既往があり、新たに強い腰痛が出た
  • 安静にしていても強い痛みが続く

腰痛の中には、感染、骨折、神経障害、悪性疾患などを除外する必要があるケースがあります。

当院では「腰だけ」を見ません

慧仁治療院では、腰が痛いからといって腰だけを施術するとは限りません。確認するのは、

  • 身体の緊張と左右差
  • 活動から休息への切り替え(自律神経)
  • 睡眠や日常生活
  • 食事・栄養を含めた身体の土台

です。症状が出た場所と、負担を生み出している場所が同じとは限らないからです。

そして、入浴も同じです。湯船だけで身体がすべて整うわけではありません。ですが、一日の最後に身体を休ませる習慣の一つとして考える価値はあります。

この一週間。湯船につかった日は、何日ありましたか。
0日だったとしても、責める必要はありません。まず今夜、お湯をためてみる。できるところからで十分です。


当院について

慧仁治療院は、東京都足立区入谷にある鍼灸・整体院です。

施術歴20年、延べ10万1千人以上のご相談実績をもとに、認定美容鍼灸師上級マスター・YNSA正規許可施術者・ONP分子栄養学認定資格を保有する男性施術者が、お一人おひとりに丁寧にご対応させていただいております。

足立区入谷・西新井・大師前・北千住・竹ノ塚・舎人・舎人公園・江北・日暮里・草加エリアの30代・40代・50代の女性を中心に、美容鍼・小顔ケア・肩こり・頭痛・食いしばり・自律神経のお悩み・睡眠のご相談を承っております。

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